おしゃべりサロン くらら舎


生きているということは学ぶこと
by kuraramichiko
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母にささげる詩 Ⅱ

 かつて 私は総社の駅前で 小さな周旋屋(不動産業)の小母さんをしていた。

  

 実家は 歩いて10分程の近さで 当時元気いつぱいの母は 娘のために

「留守番をしてやらなくては」と 毎日お弁当箱にご飯を詰め シルバーカーを押して 

私の事務所へ通って来ていた。



 当時は[跡取りの嫁」として厳しい姑(母)に仕えていた兄嫁も

健康そのもののようで婦人会 モラロジ― 栄養改善等々多方面に活躍していた。

息子(甥)のお嫁さんとは 殊に仲良く 一家は揃って 健康で円満に暮らしていた。



ところが その後 急転直下 兄嫁は肺癌に罹り厳しい闘病生活の末 亡くなってしまった。

今でも信じ難い。



しかし 遺された家族は よく頑張った。

当時幼児だった曾孫は 今 上は大学生 下は中学生に成長

甥夫婦を主軸に 実家は それぞれに忙しそうだが 仲良く平穏に暮らしている。

近くに住む叔母として こんなに うれしい事はない。



 今 107歳と9ヶ月 あと3ヶ月で茶寿となる母の人生が

どのようなものであったか 耳がとおく 認知症もでて当たり前の齢となってしまった母に

その「生い立ち」を 娘として詳しく聴いておかなかった事が 悔まれて仕方ない。



せめて アウトラインだけでもと9年前書いた「母さんの爪」

と題する詩を 改めて このプログに記しておきたい。





         母さんの爪



母さんの爪 手も足も  いい色しているね

60代で亡くなった 父さんの爪は 白くて 脆かったよ

たらいのお湯に 手足をひたして 切っても 尚 かたく

弾力ある 母さんの爪 いい音するね



右手の薬指の爪 昔々 山仕事を手伝っていて

怪我をしたのだったっけ 縦に割れたままでも爪は伸びるのね

子供の頃 不思議に思ったこと 憶えているわ



白血病で亡くなった 父さんの爪切るときは 悲しかったけど

母さんの爪切るのは うれしいよ

だって母さんは 98歳  元気な生き仏様なんだもの



シルバーカーに ほうれん草と人参三本を入れて

末娘に食べさせようと 運んでくれる母さん



私が17歳のとき 肺結核で 余命あと一年

手術以外に助かる手だてはないと

早島の療養所に入ったときは 振り分け荷物を担いで

中庄駅から てくてく歩いて 来てくれていたね



血を吐いて 手術日が延びたのも知らず

大きな荷物を背負って きてくれた母さん

いま 思いだしても申し訳なくて ごめんね 母さん



6人の子を産み 今 在るのは3人

一人は死産 一人は3歳で疫痢に罹り

一人は敗戦後 22歳の跡取り息子を結核で亡くした

辛かったね 母さん



3年寝たきりの姑も看とり

耕運機も無い時代 1町5反歩の田畑を

父と二人で 朝星夜星 働き通した母さんだもの

足腰丈夫で 爪もかたいよ



背筋はしゃんと伸び 腰も曲がっていない

母さんに贈られた杖の出番は まだない



村の入り口の一軒家 戦後の物の不自由なころ

大麦飯のおむすびと沢庵を 物乞いの人に

よく馳走してあげていたね

病人が絶えず 貧しい農家でありながら

おこりんぼうの母さんは 他人にはやさしかったね



明治の小学校しか 出ていないけど

他人さまの悪口は 言ったことが無い

身内には厳しく 褒められたことは 一度もない

兄嫁も 大変だったと思うよ

おかげで義姉さんは やさしい姑になっているよ



明治 大正 昭和 平成と時代は移り

親子四世代 ひとつ屋根の下に住み ひ孫と遊ぶ

毎日視るテレビは 専用の映画館

母さん いま しあわせですか



98年間 一度も靴を履かなかった

母さんの足 美しいよ

子供の頃は 裸足か藁ぞうり

他所いきは 桐の下駄 農作業は 地下足袋

年じゅう 絣の着物を着ていたね

真夏のアッパッパの洋服のときも

昔は下駄 今はタビックスにスポンジの草履

外反母趾など縁がない

小指の爪まで形よく いい音するね



還暦すぎた末娘は 鼻眼鏡

母さんの爪 お喋りしながら切るときが

一番 うれしいよ





以上

読み返してみて 今もそうだが 私の 母へのおもいは深く 

まるで「一卵性双子ならぬ母子」の様だ。



長寿は祝福されるどころか なかには あからさまに「大変ですネ」と 

眉を潜めんばかりの表情で 労わりの言葉をかけてくださる人もいる。



「命のバトンを継いで 一世紀余も生きてきた母」が 愛おしい。 

そのバトンを わたしたちは それぞれ いま受け継いで 懸命に生きている。

そして 脈々と 波打つものを 粗末にはできないと 

私は 自戒を込めて 自らに言い聞かせている。  
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by kuraramichiko | 2010-09-04 22:15 | 想いのままに
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